手を伸ばせば、きっと。
食事が終わり、お風呂から上がって、全身にボディークリームを塗っていた。
コンコンコンッ
「華純?」
声の主は悠都だ。
「はーい」
「入るぞ?」
「うん。」
悠都の髪、まだ乾いていないから、お風呂から上がったばかりなんだろう。
「髪…乾かさなくて大丈夫?」
「あー、いつも自然に乾かすから」
「そうなんだ」
悠都は、会話をしながら、ボディークリームを塗る私を見ている。
「な、なんで見てるの…?」
「いや、女子だなぁって。毎日?」
「うん。」
「なんで来たか分かる?」
「わかんない…」
「母さんと料理しながら、俺にマッサージしてもらいたいとか言ってなかった?」
「え!?い、いやいやっ!」
「違うのか?」
「うん…っ!お母さんだよ、してほしいのは!」
「そういうことか」
「…それで、わざわざ来てくれたの?」
「そ。」
「ごめんね…」
「スポーツしてねーの?」
「まったくできないんだぁ」
「くっ…」
悠都は、笑いたいのを堪えていて。
「な、なんで笑うの!」
「いや、真逆だなーって」
「そう…だけど」
「んー、じゃあ、何が得意なの?」
「お菓子作りとか、料理とか…」
「たしかにスポーツ関係ねーな!」
「笑わないでよー!」
「はは、悪い悪い!…女子らしくていいじゃん。」
頬杖をつきながら、急に真面目なトーンで相槌されて。
「……あり、がと…。」
「だから歯切れ悪っ」
「もーー!」
「で、いいの?マッサージは」
「い、いいよっ筋肉ないもん、私…」
「別に筋肉使ってなくてもマッサージしてやることもたまには必要なんだぞ?」
「う、うーん…」
「凝ってーの?」
「凝ってる感覚、分かんなくて」
「とりあえず横になれよ」
「えっ…!?」
ジェスチャーで催促されて、私は渋々うつ伏せになった。