手を伸ばせば、きっと。
「何食いたい?」
「決めていいの?」
「いいよ。」
「和食がいいな!」
「和食なら、あそこのビルの6階にある店がけっこう女子に人気らしい」
「え、ほんと!?行こう!」
クスッと笑って頷き、すぐに前を向く悠都。
その横顔から目が離せなくて。
わ……鼻、高い…。
「信号変わった。行くぞ」
「うん!」
そのビルまではたぶん歩いて5分かからないくらい。
「悠都、始業式いつ?」
「明後日」
「なーんだ、同じだ!」
「めんどくせーよな」
「何でー?あと1年しかないんだよ?」
「まぁな…華純は進路どう考えてんの?」
「家からすぐ近くの繚仙大学行きたいなーって。」
「…めちゃくちゃ頭いいとこじゃん」
「そうみたい…だから勉強頑張らないと。」
「華純がどんだけ頭いいかまだ分かんねーからなぁ」
「悠都は?」
「俺は創世大学!そのまま大学行けるから。」
「そっかそっか!じゃあサッカー続けるんだ?」
「そういうことになるな!」
悠都はきっと、大学生になればもっと忙しくなるんだろうな。
「家から通うの?」
「んー…」
…悠都は家を出るかもしれないのかな。
「私も、迷ってる」
「じゃあもし家出るとしたら一緒住むか?」
「え!?!?!?」
「そんな驚くことか?」
驚くよ!!!!
「家族だからそこまで気遣わなくね?」
遣う遣う!!!
「華純、何で黙ってんの。」
悠都はそう言って少し屈んで顔を覗きこんできた。
「冗談。ほら、店見えてきた。」
「あと少しだね」
私の歩幅に合わせて歩いてくれる悠都の優しさが、すごく嬉しくて。
「ペース合わせてくれてありがとう」
見上げながらお礼を言うと、少し、はにかんだような表情になった。