手を伸ばせば、きっと。
「男子って、お肉好きな感じするのに。」
「もちろん大好物だけど。地区の春季大会近いから、控えてんの。」
「食べ物も制限されてるの?」
「そう。シーズン入ると、肉よりは魚か野菜をできるだけ食うようにして、炭水化物もしっかり摂る。間食はしてもいいけど、脂質がないものとかにしろ、って。」
「大変だね…」
「けっこうキツイな。炭酸飲みたくなるけど我慢してるし」
「みんな守ってるの?」
「レギュラーはほぼ全員徹底してるけど、中には制限してないやつもいるだろうな。」
「そっかぁ。」
「まぁ、でももう慣れた。」
「そんなところでも体作りしてるんだ。」
「スポーツ選手に脂肪は不要だからな」
「筋肉しかなさそうだよね、悠都。」
「そのうち嫌でも見ることになると思うけどな。家族だから。」
「ふふっ、楽しみにしてる!」
冗談を言って笑っていると、悠都は真面目な顔になった。
「なぁ、華純。」
「ん?」
「もう少し太った方がいいぞ」
「…え?そんなに細いかな?」
「細い。何かあったとき心配」
「そっか…じゃあちょっと太る。」
私のこの言葉に、悠都はゆっくり頷いた。