水男(ミズオ)
父親は高山君に
近づいてきた。


高山君は下を向いて
視線を逸らす。


「ねえ、何か知ってないかい?」


父親に聞かれても
高山君は下を向いて首を振るだけ。


「誰か教えてください……


私達の命より大事な娘を
取り戻す手がかりを

どうか……どうか……」


父親は高山君に深々と頭を下げて
お願いをしているが


何も知らない高山君は
どうすることもできない。


小学生ながら
この親の気持ちはよくわかる高山君。


でも


この人たちを
助けることが出来ない高山君は


心が痛んだ。


「娘はやっと小学校に入学したんです。


これから中学高校大学と進んで
実り多い人生を歩むはずだったんです。


それなのに娘はいなくなってしまった。


どうして?


どうしてなんですか?


どうしてうちの娘が
そんな目に遭わなければ

ならないんですか?


うちの娘が悪い事をしたんでしょうか?
そんなわけはない。


そんなわけあるか!


あああ……」
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