水男(ミズオ)
無間地獄を彷徨う亡霊のような顔の
父親は地面に膝をついてしゃがみこんだ。


学校の先生たちが集まってきて
夫婦をなだめようとするが


悲しみは収まるはずもない。


集まってきた先生たちに
頭を下げた父親は


また立ち上がった。


「こんなところで休んでいる
ヒマはない。


私はどんなことをしても
娘を探し出す。


さあ先生。
どいてください」


心配そうな先生たちを振り払い
父親は校門の前に立った。


「だれか……」


「心中お察しいたします」


また校門の前で声を張り上げようとした
父親に背後から誰かが声をかけた。


声をかけてきた人物を見た父親は
警戒の表情。


「何か用ですか?」


冷たい言葉を返す父親。


声を掛けていた人物は
深々とお辞儀をした。


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