水男(ミズオ)
中村は真剣な表情の平野を見た。


昔の平野はこういう表情をしていたんだろうと
中村は想像していた。


窓を閉めた平野は
また椅子に座った。


鋭い目をして
両手を組んだ平野は口を開く。


「ボクは人の心を読む天才。


瞳孔が1ミリ動いただけでも
毛穴が1ミリ収縮しただけでも
瞬時に察知して


人の心を読む。


人が何を考えているかなんて
ボクは手に取るように


分かってしまう。


私自身もボクに手玉に取られ
いいように操られて


敗北しました」


そう言ってため息をついた平野。


渋い表情のまま背広の内ポケットに
手を入れ


うまい棒を取り出した。


パッケージを開けると
部屋に広がる明太子の香り。


平野は鋭い目つきのまま
うまい棒を口にくわえる。


「そこで駄菓子かよ……」


かすれた声で突っ込みを入れる中村。















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