水男(ミズオ)
「報告を終わります。失礼します」


敬礼して部屋を出ようとする横田。
その背中に平野が声をかけた。


「ちょっと待ちなさい、横田君」


「はい、なんでしょうか?」


振り返り平野を見つめる横田。


平野は一瞬ニヤリとして
横田にこう言った。


「横田君、君は独身だよね?
恋人はいるのかい?」


不思議そうな顔の横田。

平野の問いを聞いて
肩をピクリとさせる中村。


「まあ…恋人はいませんけど
それがどうしたんですか?」


なぜそんな質問をされるのかわからない横田は
首をひねって平野に言葉を返す。

横田が恋人がいないと聞いて
平野は満面の笑み。


「じゃあうちの中村君なんてどうかね?
こう見えて優しい所もあるんだよ。

いい嫁さんになってくれると
思うんだけどなあ」


平野の突然の言葉に
顔を赤くして中村を見つめる横田。


そして中村は肩を震わせて
下を向いて動かなくなった。


「え?いやあ……


考えときます」


そう言って逃げるように
部屋を出ていく横田。


そして残された平野はため息をついた。
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