水男(ミズオ)
俊介は笑顔で網を見つめる。


「ベイエリアに新しいレストランが出来たんだ。


落ち込んでるばかりじゃ
駄目だから……」


そう言って一瞬ニヤリとする俊介。


「週末にでも一緒に行かないか?」


デートの誘いだ。


しばらく迷ったような顔をした亜美だったが
俊介の顔を見て笑顔でうなづいた。


「そうね。落ち込んでばかりじゃ
駄目ですよね。


俊介さん。連れて行ってください」


その言葉を聞いた俊介の
頭の中に


恐怖で歪んだ美里の顔が浮かんでくる。


美里を家の中に連れ込み
油断しているところを


背後から首で絞めた。


「なぜ……なぜ……」


髪を振り乱して
顔を歪ませた美里の表情を思い出して


俊介は恍惚となっている。


気持ちいい。


最高に気持ちがいい。


自分の手で理不尽に
他人の人生を終わらせる快感に


俊介は酔いしれていた。

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