水男(ミズオ)
するとエレベーターの中の人物が
拍手を止め


ニヤニヤしながら亜美に警察手帳を
突きつけた。


「この前伺った平野です。覚えてますか?


全く見事な手際としか言いようがない。
拍手を送りますよ」


一瞬恐ろしい顔になる平野。


「いったいどうやって俊介さんを
バルコニーから落としたんですか?」


その言葉を聞いて笑顔になる亜美。


「まるで私が落としたような
口ぶりね。


俊介さんは確かに
自分からバルコニーを乗り越えた。


私は何もやってないわ」


するといつもは冷静な平野が
珍しくドスの効いた声。


「そんなこと言ってられるのも
今のうちだ。


話は署でゆっくりと
聞かせてもらおうか」


平野は懐から
手錠を出した。


銀色に鈍く光る
問答無用の拘束具。


だが亜美は手錠を見ても
表情を変えなかった。


にっこりと笑って
両手を差し出す亜美。


「どうぞ捕まえてください。


それで刑事さんの気が
収まるのなら」



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