水男(ミズオ)
驚いた俺がリビングに
走りこむと


そこには地獄のような光景が
広がっていた。


あまりの惨状に
俺は青ざめて体を震わせる。


真理子は俺のコレクションの
カットグラスを


粉々に壊してしまっていたのだ。


美しく光り輝くカットグラスを。
名工の手で一つ一つ作られた


特別なグラスを。


俺が苦労して集めた
思い入れのある品を


粉々に壊された俺は
完全に頭に血が上った。


「なんてことをするんだ!」


俺は当然叫んだ。


でも真理子はうすら笑いを
浮かべながら


こう言った。


「血の通わない人形のような
あなたでも怒るんだ」



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