水男(ミズオ)
(君が後を付けていたのは気づいていたよ)


謝る亜美の肩にポンと
手を置いた俊介。


高山が肩を叩いたら
間違いなくセクハラで訴えるだろうが


亜美は肩を叩かれても
赤く頬を染めて


俊介を見つめているだけだった。


俊介は下を向いて
小さくつぶやいた。


「ここではダメだな……」


亜美は心配そうに見つめている。


「気持ちはわかります。
でも気を落とさないでください」


亜美の励ましの言葉に
弱弱しく笑う俊介。


(ここではダメだ)


そして優しい顔の俊介は
亜美にこう言った。


「俺が涙を流すのを
見たんだね」


(ここではダメだ。

ここで首を絞めたら
警察にばれてしまう)
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