涙のむこうで、君と永遠の恋をする。


「………?」


あたしは、カンペから目を離して、顔を上げる。

すると、あたしの数十歩先に立つ男の人がいた。

でも、その人はなぜか提灯をもっておらず、顔がよく見えない。


「提灯、渡し忘れですか?ごめんなさい、もしよければ、ここにも予備が……」


そう声をかけたのに、男の人は何も言わず、無言でこちらに歩み寄ってくる。


え、何……?

あたしは、その異様さに1歩後ずさった。


「ずっと探したよ、ほのかちゃん」

「え……?」


ーゾクゾクッ

その声に、話し方に体の芯から震えが走る。


この声……この声、まさか!!

でも、そんなはすない。

あの男は、あたしたちには近づけないはず…。


「あなた、誰……」


なら、この人は……誰?

ついに、目の前まで来た男は、フードを被っていた。

あ……いつか、電柱の所に立ってたあの男だ。



「忘れるなって言ったはずなのに」


そう言いながらフードを脱いだ男の顔を見て驚愕する。

ボサボサの髪に、三日月のように細くつり上がった目。


『忘れるなよ、お前なんていつでも殺せる』


忘れもしない。

そう言って、あたしとお母さんに恐怖を残した男。








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