涙のむこうで、君と永遠の恋をする。


「あたしは、用事があるのでここで…」


あたしはみんなの前に向き直り、ペコリと頭を下げた。


「あ!なら、俺送るよ?」


そう言ってくれる渚くんにあたしは笑みを向け、首をフルフルと横に振った。


「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」


これは、やんわりとした拒絶。
それを、感じ取った渚くんは、寂しそうに笑みを浮かべた。



「……なら!今度また一緒に遊ぼう!」 


渚くんの言葉に、あたしは作り笑いを返す。


「うん…ありがとう。じゃあまた明日」


そう言って、あたしはみんなに手を振った。


そんなあたしを、何か言いたげに見つめる渚くんに気づきながら、あたしは背を向ける。



そして、前橋精神科病院(まえばし せいしんか びょういん)までの道のりを歩く。


夕日が、あたしを照らして目の前に影を映す。


それが、もう一人の隠している弱いあたしに見えてしょうがない。


その影から視線を反らして、あたしは前を向いた。
これから会うのは、お母さん。


精神科病棟に入院して、4年ほど経った。


だけど、回復の兆しは見えない。








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