【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
座り込んで、曇りのない空と小綺麗な病院の中庭とに当てもなく視線を這わせる。
ここから見える歩道橋、向かい側に建つマンション。
駆け込んでくる業者さんを見て、病院にも宅配できるんだな……
なんて。
そんな小さな発見を幾つか目にしながら、膝に乗せた本のカバーを撫でていく。
それはもう、一種の癖のように何度も、何度も。
見ていると結構面白みがあるのもまた、少し楽しいところ。
どこかにお出掛けか、ベビーカーを押した女性が隣を歩く女の子とじゃれ合いながら歩いている。
微笑ましい光景に、思わず、くすりと笑みが漏れた。
……と。
「わ、どしたの媛華。頬すっごい緩んでるけど。
なに、頭でも打った?」
すぐ横から高揚した声色が聞こえてびくりと肩が揺れる。