【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
すぐに出てこなかった自分の名前に一瞬遅れで反応を示して、覗き込んできた顔を目を見開いて見返すと、そう年の変わらない女の子が腰を曲げて立っていた。
「……え、と…」
だれだろう、と率直な意見が真っ先に頭に浮かぶけど、知り合いかもしれないからすぐには口にできない。
言葉を濁しながら、さっと観察してみる。
……綺麗な人、だな。
にっこり笑顔を見せるその人をしげしげと眺めつつ、そんな事を思った。
「……あのさ、先輩。忘れてんなら言ってやるけど。
もう帰っていいだろ俺は」
ひどく不機嫌な声が聞こえて入り口に目を向けると、無愛想な人が一人。
少しだけ身長が足りなくて、少しだけ顔が幼くて、少しだけ変声に乏しい。
異性としてはおよそマイナス要素しかないだろう外見に、多少迷いはしたものの、ある一つを断定した。