【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
どうしろって言うんだ、この状況は。
たった今出て行ったばかりのドアを軽く睨み付けながら、重いため息を吐きかけた時――。
「やっぱ、受け入れられねーよな」
ぽつり、聞こえた呟き。
不意に漏れてしまったような、本当にただの独り言だったに違いない。
「何が……?」
吸い寄せられるようにごく自然に、聞き返した私を振り返って彼は驚いた顔をしていたから。
ようやく、うっかりぼやいた自分の失態に気付いて口元をさっと押さえていたけどもう遅い。
聞かれたからには仕方ない。
そんな顔で彼は、目を逸らしながらため息を零して、話し出した。