【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
気持ちはまた先走り
* *
彼女を見つけたのは、病室からそう遠くない場所だった。
自販機横のベンチに腰掛けて俯いているから表情は分からない。
一人で座り込んで何を……
そう思った瞬間、その肩が震えている事に気付いて、躊躇った私は声をかけるタイミングをあっさり失ってしまった。
咄嗟に、今出てきた角に身を隠して機会を窺う。
幸い、私の姿は認められなかったようで、ほっと息を吐く。
……いや、違くて。
声をかけたかったのにそれじゃダメだ。
何を安心してるんだと、自分で自分を諌めて飛び出そうかと思案していると。
「…っふ、ぅ……う…っ…」
小さく、押し殺すような声が耳に運ばれた。
か細いけど、確かに届いたそれは、紛れもない彼女の本音を語った泣き声。
「なんで…何で……あの子な、の…?あの子が何か、したの…?私の友達が……何か……。
もう、分からない、よ…ぉ……うっ…あぁぁぁ…っ」