【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。




追いかけないと、って思ってきたはずなのに。


私……何、してるの…?


ふと、頭を占めたのは今更ながらの問い掛けだった。



ここに来て、肝心なところで体が動かなくて、声なんてかけられない。


言葉なんて出てこない。


あの人に私は今、どんな言葉をかけたらいいの……?



ああ、私は……なんて無力なんだろう。


そう、思うしかなくて。


こつん、壁に背を凭れて、軽く頭を打つ。



2、3歩離れただけの曲がり角に足を踏み出す勇気も、その気も無くなった。


すぐ側にいるのに、彼女とそう離れている訳じゃないのに。


心の距離が遠くて、今の私じゃとても埋められそうにないと。


……そう、感じてしまった。


全部を失った現実を、始めて突き付けられた気がした。



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