【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
「ん、もう戻ってきたのか……って、何だよそのしけた顔」
パイプ椅子を持ち出して座る彼は、戻ってきた私を見て思いきり顔を顰めた。
そんなに酷い顔をしているんだろうか。
いや、酷いというよりもすごく、今の私は情けない顔をしてるに違いない。
自覚があるだけ、まだマシなのかもしれない。
「私……今の現状をどうでもいいって思ってたんです。
記憶喪失とか、精神疾患とか……本当、訳分からないし…。冗談でしょ、ってすごく馬鹿馬鹿しくて…」
そう、確かに私はどうでもいいと思っていた。
けどそれが申し訳なくて、こんな時、あんな時、さっきだって……
どうすればいいのか分からない。
なんて言えばいいのか分からない。
頭が上手くまとまらなくて、胸に変な突っ掛かりがあって、もどかしい。