【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。







「ん、もう戻ってきたのか……って、何だよそのしけた顔」


パイプ椅子を持ち出して座る彼は、戻ってきた私を見て思いきり顔を顰めた。


そんなに酷い顔をしているんだろうか。


いや、酷いというよりもすごく、今の私は情けない顔をしてるに違いない。


自覚があるだけ、まだマシなのかもしれない。



「私……今の現状をどうでもいいって思ってたんです。
記憶喪失とか、精神疾患とか……本当、訳分からないし…。冗談でしょ、ってすごく馬鹿馬鹿しくて…」


そう、確かに私はどうでもいいと思っていた。


けどそれが申し訳なくて、こんな時、あんな時、さっきだって……


どうすればいいのか分からない。


なんて言えばいいのか分からない。


頭が上手くまとまらなくて、胸に変な突っ掛かりがあって、もどかしい。


< 116 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop