【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



そんな私を見て、ここを離れた間の事情を悟ったらしい彼は、呆れたように深くため息を吐いた。


「だから言ったろ。そっとしとけって」


「……それでも、何か気の利いたことくらい言えると思ってたんです。ありきたりでも何でもいいから、とにかく何か。
けど、言えなかったんです。口を開いて話す以前に、真正面に立つ事もできませんでした。
無理やり同調してみせて適当なことを言っても白々しいだけだって思えて……」


あの時、口の中がカラカラに渇いたみたいに、言葉にならなかった。


それはきっと、色々あるけどやっぱり、自信がなかったからかもしれない。


向き合う覚悟もなく、ただ呆然と。


「んなこと言ったって仕方ねーだろ。
俺をお前の愚痴の吐き出し口にすんな。そんな気に病むんなら、俺じゃなくてあの人に直接言えよ。
俺は関係ないし、そんな事聞くためにここにいるんじゃない」


確かにそうだ、と思い至って自分の勝手を恥じた。


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