【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
この人に話しても仕方ないことは分かっているのに。
それでも何かに縋りたかった。
言葉を失うのと同時に、視線のやり場にさえ困って顔を下へ下へと俯ける私に掛けられたのは、唐突に、けれど一変した柔らかい言葉。
「…でも、いいんじゃねーの。
別にそれが悪いことだとは思わないし。聞いてやるからせめてもう少しマシな話でもすれば?」
頬を掻きながら言う彼の顔はさっきと変わらずぶっきらぼうだったけど、耳が異常に赤かった。
言葉は辛辣。胸に刺さるような正論。
不器用で、決して突き放さないのは励ましと、優しさ。
気の遣い方が下手だと言えばそれまでだけど、それでも、側にいるほど馴染むのはどうしてだろう。
この人の側にいると、とても心が落ち着くんだ。
ああ……
泣きたいくらいに、心地良い――。