【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
受け取った袋の中身を確認して頰が綻ぶ。
頼んでいた本の新刊が数冊。
笑顔でお礼を言えば、視線をキョロキョロ彷徨わせている照れた姿が窺えた。
「2人でずるいなー。いいよっ、あたしだって媛華が好きなジュースたんまり持ってくるから」
「何を張り合ってんだよ、何を。つーかそれ、一種の嫌がらせだろ」
「む、失礼な。手一杯の花束ならぬ手一杯の缶ジュースなのっ」
「意味わかんね」
ほのぼのしいやり取りにそっと微笑む。
理由なく、こんな日常が酷く嬉しく感じるのはどうしてだろう。
何かきっかけでもあったのか、それとも無意識ににじみ出た前の記憶の一片か。
どちらにせよ今は、何も考えずにゆっくりと時を待とうか。
そんな心のゆとりと余裕から、まずはと袋から取り出した本の艶やかなカバー表紙、背表紙を確認。