【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
あらすじにさっと目を滑らせてから、始めから数ページ捲って読み出した。
文字を追うごとに、自然と周りの音がシャットアウトされて無音状態になる。
そうして一つの物語へと意識は落ちて行った。
次に意識が戻ってきたのは、一息つくためにふと顔を上げた時だった。
見た限り、側には誰もいない。
声をかけてくれたら良かったのに。
否、きっと気を使ってくれたのかもしれない。
またやっちゃったか、と反省しつつ、申し訳なく思った。
けれど時間はそれほど経過していないみたいで、二人のいない今、私は暇を持て余す時間を作ってしまったらしい。
困った、と頰を軽く搔いて立ち上がる。
読書後はそのまま伸びをして気分をリフレッシュするのが日課になっていた。
とりあえず、後日にでも二人に埋め合わせしないと。
奥田さんは笑顔でお願いを催促してきそうだ。