【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
それがまた何とも可愛らしいほど小さなもので、思わず苦笑いしてしまいそうになるけど。
香川くんは……
と、そこまで考えて笑みが零れた。
きっと、何も望まない。というか、露骨に嫌な顔をされそう。
「それくらい何でもない」……とか言ってため息を吐いてくるに違いない。
その他諸々お世話にもなってるし、お礼くらいしてもそれこそ構わないと思うんだけど、そこは真面目な人だから。
というより、融通が利かないというか……。
ある意味で分かりやすい反応は見ていて面白いけど、あんまり弄ると怒り出すから抑えないと。
そうして一人でくつくつ笑っていると、物音がした気がした。
カーテンの四角から、ドアの開く音。
気がした、というのはそれほど微小で、空耳かと思ってしまうほど微かなものだったからで。