【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
だけど確かに気配があった。
押し殺すような極めて薄い影、静かで控えめ。
明らかに私の知らない人。
そう認識したからこそ、冷静に問いかけた。
「誰ですか?」
そんな私に応えるように姿を現した人物を目にした瞬間。
身体中の血が沸騰するような、眩暈にも近い感覚を全身に覚えた。
目を一杯まで見開く。
白い肌、ふわりと揺れる艶やかな髪、淡く色素の薄い瞳に、すっと違和感なく通った鼻筋、緩く結ばれた薄い唇。
長い睫毛が影を落とし、陽の光が頰を仄かに染め上げる。
一見華奢な体付きも、見劣りしないほどの高身長、長い足としなやかな腕指とで補われて、調和のとれた見目だ。
なんて綺麗なんだろうか。
日本人離れした容貌に目を見張るのと入れ替わりに、湧き上がる歪んだ感情。