【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
怖くて恐ろしい。
辛くて苦しい。会いたくない。
それなのに……
悲しいほど儚くて、切なくて。
その佇まいは、慈しみ、守ってあげたくなるほどに繊細で。
本当は、とてもとても優しい人だと知っている。
私は彼を、知っている。
ずっと、ずうっと前から。
それこそ、言葉を覚えたての舌足らずな、そんな頃から。
――『ぼく……と、いっ…しょに――あ、……ぼ』
びりびりと頭の中で響く雑音混じりの言葉。
触れてもいいと、構わないと差し出された、誰かも知れない温もり。
握り返した小さな手。
ああ、覚えがないのになんで、どうして……
こんなにも、懐かしいんだろう。
近付きたいと思った。
怖くても恐ろしくても、それでもいい。
私は彼に…――。