【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
「……ううん、別に。何でも、ない…。純くんこそ、どうしたの?」
もうとっくに帰ったと思ってた。
と、焦り急いでいたのはどこの誰かと自分に問いながら、言った。
「僕は、鞄はあるのにヒメがいないからってここで待ってただけ。ほら、ヒメの教室はすぐ目の前だから」
「そ…っか…」
笑え。笑え。必死に笑みを作って。
平然なふりをして、普段通りに振る舞えばいいだけ。
気付かれないよう。勘付かれないように。
「鞄、取っておいで」
「…うん」
……なんて、そんな嘘が通用する訳がなかったのに。
何を、安心しきっていたんだろう。
純くんにバレていなかったという安心感から、頰が緩むのを感じた。
手をぎゅっと握りしめ、純くんの横を通り過ぎようとした。
「――…告白、されてたね」