【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
何かが違う。さっきと、何かが。
この人に何かある?
それとも、そう感じてしまう私がおかしいだけ?
本能的に。
素早い行動に表現をしてみるなら、最も適切だろう言葉だと思うけど、果たしてそれが正しいかどうか、第三者の立場に立つ余裕さえない。
だって、考えるより先に体が動いていた。
コードの先の、掌に収まる程度の機械。
ボタンを押せば必ず誰かが応答してくれる、必ず誰かが来てくれる代物。
ベッド脇のそれを手に取ろうとした、前触れもなく行動したはずだった私の上を行く影。
一縷の希望さえも一瞬で砕け散った。
「押させない」
努めて穏やかな声で、言葉で、けれど威圧たっぷりに私を牽制する。