【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



大切なものを私は失くした。


全部なのか、それとも断片的なものなのか。


二つに一つ。


その差は大きいはずなのに、どうしても分からない。



砕けた欠片は拾い集める前に、一つ残らず何処かに消え去って、私はずっとそれを忘れていた。


忘れたことを知らなかった。


知らないままでも良いと、思っていた。


あの頃の私は、何も望まなかった。


否、正確には望んだ事が多すぎて、何を望んだかも分からなかった。


だから逆に、何もいらないと思っていたんだ。


自分のことで手一杯と、周りを見る余裕もなくて、少し目を凝らせば見えるものが沢山あったのに。


ああ、でも何だっけ。



私はまだ、何も拾えていない。


まだ何も、必要だと思える事がないから。


大切なものが何かを思い出せないままだから。


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