【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
落ち着いていて、とても知的そうで、見た事がないくらいに整った容姿。
私の抱くイメージ図と人物像がぴったり重なって、同一人物だと認めざるを得ない。
返す言葉を今度こそ見失った私は、無言を貫いたまま目を逸らした。
そんな私に彼女は、「やっぱりね」とでも言いたげな様子で、言葉の代わりに深く重いため息を吐いた。
その顔はどこか憂いを帯びていて、辛酸なほど暗い影が覗いている。
と、そう感じてしまって不安になる。
今、何を考えているの……?
問いたい。けど、叶うなら口を噤んだままでいたい。
相反する思いに戸惑って高ぶり出した感情の渦を飲み込むように、努めて静かに呼吸を紡ぐ。
それは、甚だ疑問を抱えてしまうほどに不自然だった。
「ねえ、媛華」
重苦しい唇を震わせて、先に言葉を発したのは私じゃない。