【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
嫌な感じ。
「——榎本くんは」
ただの気のせい、錯覚。だから大丈夫。
無理に思い込もうとして頭から閉め出そうとするけど、一度インプットした名前と顔が既に一致していて、不可能なのだと嫌でも思い知る。
「媛華の幼なじみはさ……
一体、なんなの…?」
指先まで冷えてく感覚。
なのに気持ち悪いくらい生暖かくて、何か、どろどろしてるものが体を包んでいく。
——幼なじみ。
って、どういうこと。
——何か、とか。
聞かれたって分からない。
そんなこと、私には分からない。
揺さぶられるように頭の中がガンガンして、金属同士が重なって奏でるようなキィィンと響く耳障りな音がする。
気分でも悪いのかな、なんて。
自分の体なのに他人事のように遠く思った。
そうしたら段々と、脳内が痺れるように麻痺してきて。
何も、考えられなくなる。