【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
「っ…泣かない」
滲む視界をクリアに戻して、飛んでいきそうな理性を必死にかき集める。
溢れる全部を、ぐっと堪えて押し留めた。
泣かない泣かない、泣かない。
辛いのも苦しいのも私じゃない。
慰められる立場じゃない。
今涙を流したいのは別の人。
私はそれを案じる側で、何もできない傍観者。
掴めそうなくらい近くにあるものを拒否して、自分から突き放したなら、それだけの責任はきちんと取る。
偽善者、自分勝手、自己満足。
そんな単語が浮かんで乱れて、飛び交った。
自覚してないわけがない。
動けないくせに。怖かったんだ。
だから自分から突き放したんでしょ?
分かってるよ、私が一番分かってる。
どれだけ罵られても、結局私はそこまでの人間だから仕方ない……なんて。