【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
畳み掛けるような、落ち着き払った奥田さんの声。
私がいない間に来たんだろう、苛立たしげに返す香川くんはかなり限界が近いらしい。
酷く不機嫌顔で、今にもキレかかりそうだ。
「で、何か知ってる?」
「あーっ、もうだからっ!名前くらいしか知らねーし、何かってなんだよ。
さっきから何なんだよ、あんた!!」
いい加減に堪忍袋の緒が切れたのか、荒ぶった声を上げる香川くんに、奥田さんは目に見えて項垂れた。
「そ…っか。ごめんね、えと……そこまで怒ると思わなくて…」
「……いい。で、結局何が知りたかったんだよ」
反省の色が滲む声。
たじろいだ香川くんの機嫌も、通常に小さく萎んでいくのが分かった。
「何が……うーん?何が知りたかったんだろーね…。
言うなれば、何も知らないから何か知りたかっただけだと思う、うん」
「はあ?」