【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
意味不明、と滲み出るような心の声がはっきりと見て取れる。
奥田さんは一体、何が言いたいんだろう。
知らないから、知りたい。
それが良い意味とは捉えられないのは、辺りに漂う不穏な空気のせいかもしれない。
そうだ、流されているだけ。
何も悪い事なんて……
「媛華と榎本くんってね、幼なじみなの。小学生からずぅっと一緒にいるんだって」
「ふーん、だったらその人連れてきた方があいつも喜ぶだろ」
——…ない、とは言い切れなかった。
どうしてか、否定できない何かが動いているような気がして。
「んー、なんだろ。なーんか呼んじゃいけない気がして。
信用できないって言ったら近いかも」
「は…?」
「あの二人、絶対何かあるって、断言できる。
だって媛華、いつも……何かに怯えてた」
淡々と、世間話をするかのように告げられた言葉に迷いがなくなっていた。