【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
「だから、媛華の視線の先にいるのが何かなんて簡単。あの子、いつも榎本くんを追ってる。
そりゃ、あたしだってそこまで鋭いわけじゃないけど、鈍くもないつもり。
なんとなくだけど、それでも少しくらい気付いてる。分かってるのに」
「……」
「姫華って変なとこでほーんと、頑固だから。
だから、真面目に何でも考えちゃうんだよね。絶対自滅するタイプ、あれは」
「……」
「だからね、すっごい心配になる。待ってても何も言わないんだから、いろんな意味で手がかかる」
呼吸もままならないくらい、息を殺して気配を消す。
もしここで入って行ったとして。
私には一体、何ができたんだろうか。
そんな事を考える傍らで、呆れたため息と共に言葉を紡いだのは他ならぬ香川くんしかいなかった。
「……あんたが面倒かけてるかと思ったら、どっちもどっちかよ。面倒くさ」