【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
エレベーターを待ちながら、ぼんやりとさっき聞いた事を一つ一つ、丁寧に整理してみる。
私が知らないから。
見ていないところで、傷付いて泣く人もいる。
考えてみれば当然の結果なのかもしれない。
逆に今まで思い至らなかった事自体が不思議でならない。
やっぱり、無知なままなのはいけない事なんだろうな、と。
あれほど悩んでいた問題が、すんなり解決しかけていて、ちょっとだけ安心できた。
チン、と小さな音がして、エレベーターが到着した。
開いたドアから30前後と思われる男女が降りてきたから一旦脇に避けて、降り切るのを見届けてから入れ違いに乗り込もうとした。
その瞬間——。
「ひ……めかぁああっ!!!」
本当に一瞬、隕石でも落下してきたのかと思ってしまった。
ああ、なんて非現実的なんだろう。