【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
反省の色一つ窺えない愛嬌のある言動に抗議すらする気も失せた。
私、なんでこんな事になったんだっけ。
混乱のあまりに、一度前に巻き戻して思い出してみようか、と。
脳に働きかけようとした私にかけられたのは衝撃の言葉。
「拗ねないでね、媛華。
お医者様からお電話頂いて、時間はかかったけれど、これでも急いで帰国したのよ?」
「お前の旅行好きが災いしたんだろう。親として恥じ入るべきだな」
「あら、心配性の貴方に言われたくないわ。
だったらこの子の父親としてこっちに残るべきだったのよ」
“親“
私の両親。
お父さんと、お母さん……?
何故だか当たり前の、それでも妙に耳慣れない単語に目を見開いた。
本来ならもっと早く顔をあわせるはずだった家族の存在。