【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
今、やっと。
目が覚めてからようやく顔を合わせたというのに。
実感が湧かないのは、多分——
“私”が、この人達を知らないから。
ここ数日で積み上げてきた記憶の中にはいない、今初めて会った人達だから。
ふらりと今にも倒れそうな身体。
意識が飛びそうになるのを堪えて、ぽつり。
小さく呟いた。
「どうしよう……」
遠くない前科を喚起して予感する。
一つの焦りが微かに、けれど確かに胸の奥で渦巻いて、生まれた。