【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
その姿が完全に見えなくなった瞬間。
立っているのもやっとだったらしい足は、その場に崩れ落ちた。
見れば、尋常じゃないくらいに震えている。
寒くもないのに、そんな気がして腕を摩ると、同様に震えを起こしていた。
止まれ、止まれ……
こんなの、いつものことで。
何を考えてるか理解できない、気まぐれすぎるあの人に従うのはもう、当然のこと。
だから、大丈夫…でしょ?
暗示をかけるように腕を掴む手に力を込めるけど、全然収まってはくれない。
そんなの、当然だ。
そうしている間にも頭の中を占めるのは、背を向ける直前の純くんの姿だったから。
その目は“お仕置き”と、確かにあの時語っていた。
何度も何度も、逃げ出してしまおうかと考えた。
だけどあいにく、そんなに愚かで浅はかで、卑しい……
小さな勇気も何も、私は持ち合わせていないから。