【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
純くんのオムライスは本当に大好き。
昔は、やりすぎて黒こげになったり、下ろすのが早すぎて黄身が破けたりもしたのに。
私より上手過ぎて称賛しか出てこないな。
だけどそれ以外の料理に関してはからっきしだから不思議だ。
「純くんってオムライスしか作れないのに、どうしてこんなに美味しいの?」
卵を突きながら何気なく聞いてみた。
予想に反して、返ってきたのは少しトーンの下がった柔らかい声。
「ヒメの為だよ」
「……私…?」
「ヒメが、オムライスが好きだって言ったから。オムライスだけは何度も何度も練習したんだ。
僕にできるのはこれくらい、だからね」
「純くん…?」
会話中、全く逸らされなかった瞳が微かに揺らいだ。
一瞬、様子のおかしい純くんにたじろいだけど、きっと気のせい。