【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。


あまりに不躾だったな、と慌てて謝る。


当然、そんな事くらいで怒る純くんじゃない。


困ったように息を吐いて微笑む純くんを見る限り、とても悪い人には見えない。



趣味とか、好きな食べ物とか、そういう事は聞けば、基本的に何でも教えてくれる。


だけど……


本質的な話に迫ると、「さあね」と。


何かと言葉を濁してくる。



純くんは前から、自分の中に他人を踏み入らせない節があった。


抜け目なく人の言動を誘導して、気を逸らさせる。


それ以上追求させないし、何一つ悟らせない。


純くんの事は私が一番知ってるつもりだけど、一番、私が知らない立場にいる。


それは私が踏み込もうとしなくなったから……って、いうのもあるけど。


近過ぎて、逆に警戒させてしまうんだ。


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