【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
なんで、と。
苛立たしげに表情に表して問いかけると、それを不快に思わないのか、男の子は小さく微笑んだ。
「だって媛華ちゃん、自分をちゃんと見せてくれないもん」
一瞬、意味が分からなかった。
私はちゃんと素で話してるよ、って幼いながらに、何度も心の中で訴えた。
「媛華ちゃんも、自分にコンプレックスを感じてる」
「それは…」
「ね、そうでしょ?」
小学生でかなり大人びた喋り方をする子だと思った。
ずけずけと核心をついて人の中に土足で踏み込んでくる、失礼な子だとも。
不快感を丸出しにする私に、また男の子は微笑んだ。
「ねぇねぇ、僕とキスしてみない?」
「…え?」
一見無邪気な笑顔で、子供が親に物をねだるように問いかけられる。
何を言っているのかと、耳を疑った。