【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。


悪びれた様子のない美乃里に、次は絶対貸さないと何度心に決めても上手くいかない。


裏表のない彼女に結局、甘くなってしまうのが私の悪い癖。


どうにかしないとな、なんて思っても今更意味を成さないことは自分が一番分かっていたし、正そうとは考えなかった。




「あ、そういえばさ…」


受け取ったノートを手に小首を傾げる美乃里。


「今日は榎本くん一緒じゃないの?」



瞬間、ドクリと心臓が軋んだ。


珍しいね、って言う美乃里に悪気がないのは分かってる。


他人の口からその名前が発せられただけで異様に反応してしまう私がおかしいだけ。


そう、分かっているけど。



ここまで敏感になると、それが私を縛り付けて離さない一種の呪いみたいで、無意識のうちに重苦しい吐息が漏れてしまう。


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