【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。


そうじゃないと、平常ではいられない。


自分を、保っていられなくなる。


そう、思ったから知らぬふりを貫いた。


……けど。




「ねーえ、媛華」


「なに?」


「何かあったら、いつでも頼ってよ。友達…でしょ」



妙に勘繰るような言動に、まさか……と。


そんな訳がないにも関わらず、深く訝ってしまう。


ビクビクしながら、その言葉に含まれた真意を探って、自分を安心させないと気が済まなくなる。



美乃里は一体、何が言いたいんだろう。


ああ、でもきっと。


いつになく控えめな美乃里に聞いても、答えてくれない。


そう思ったから、問うことを諦めた。



「うん…」


中身なんて存在しない、曖昧な笑みを浮かべて返事をした。


ただそれだけの行為が、まさか。


後に美乃里を苦悩させてしまうことになるなんて。


自分のことで手一杯の私は気付かない。



< 50 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop