【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
そうじゃないと、平常ではいられない。
自分を、保っていられなくなる。
そう、思ったから知らぬふりを貫いた。
……けど。
「ねーえ、媛華」
「なに?」
「何かあったら、いつでも頼ってよ。友達…でしょ」
妙に勘繰るような言動に、まさか……と。
そんな訳がないにも関わらず、深く訝ってしまう。
ビクビクしながら、その言葉に含まれた真意を探って、自分を安心させないと気が済まなくなる。
美乃里は一体、何が言いたいんだろう。
ああ、でもきっと。
いつになく控えめな美乃里に聞いても、答えてくれない。
そう思ったから、問うことを諦めた。
「うん…」
中身なんて存在しない、曖昧な笑みを浮かべて返事をした。
ただそれだけの行為が、まさか。
後に美乃里を苦悩させてしまうことになるなんて。
自分のことで手一杯の私は気付かない。