【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
文章が繊細だし、内容が妙に現実味を帯びてて頭にするりと入ってくるから好きな作家の一人。
軽く悩んで、本棚の下の方にあるその本を手に取った。
その時――。
微かに、けれど確かな寝息がかなり近くで聞こえた。
辺りを見回して、ようやく気付く。
見れば、本棚と本棚との間に設置された一人掛けの読書スペースに誰かが座っている。
妙な好奇心に駆られてそろりと覗くと、壁に頭を持たれかけて熟睡中の生徒が一人。
「……男の、子…?」
ネクタイの色を見れば1年生。
私の一つ下だから、後輩で間違いはないけども。
無意識に呟いた言葉が疑問系だったのは、一瞬確信を持てなかったからだ。
その面立ちから、女生徒かと思って下を見れば、スラックスを穿いていて。
もう一度顔をよく見ると、普通に異性だった。