【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



この人の態度は、何故だか変だった。


ただ、起きたらすぐ目の前に得体の知れない奴がいたから警戒している。


……と、そうは見えなかったから、黙っていることが得策だと考えた。



うん、きっと判断は正しい……と、思いたい。


単なる女嫌いか何かだろうか。


あまり関わりたくないな、と、気まずさから思い始めた時。




「……それ」


ほんの少し、緩んだようにも聞こえる声音に、意外な気持ちを抱いて首を傾げる。


何が……と、その目が向いた先を辿ると、私の抱える一冊の本にたどり着いた。



これがなに、と怪訝な顔を表に出せば、さっと逸らされる不機嫌顔。


「その本、好きなのか?」


だけど確かに声から棘が消えて、口角まで僅かに上がっている始末。



この人、もしかして嘘付けないの……?


そんな、おかしなものを見たような私に気付かないまま、もう一度聞いてくる。


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