【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



「好きなのか、それ」


「……え、あ…これ…?うん。この人の本、文章が綺麗だから…すごく、好き…」


繰り返された問いに一瞬遅れて今度こそ、言葉を返す。


すると、さっきとは打って変わって明るい表情を見せる男の子。



「俺も好き。映画じゃなくて原作の小説好きだっていう奴に会ったの初めてだ」


意図したわけじゃないだろうけど、その変わり身の早さに呆気にとられてまじまじと顔を覗き込んでしまう。


「あ……元々、好きな作家さんでもあったし…」


「あ、やっぱりか。他の作品も知ってる風だったからそうだと思った。
ならこれはどうだ?」



弾んだ声。


最早その顔を隠しもせず、嬉しそうに立ち上がって、向かいの本棚に手を伸ばす。


抜き出された本は、多少薄い中編小説。


文章の文字も他の作品に比べて大きくて、文字数はそれほどない。


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