【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



完食後、軽く手を合わせてから弁当を袋にしまい込む。


「ちょっとー?聞いてるの?」


「…美乃里」


ようやく美乃里に目を向けて微笑を浮かべると、何か勘違いしたのか、笑みを明るく返してくれた。


だけど……



「先戻る」


一言告げて立ち上がると私は、そそくさと逃げ出した。


後ろで何か叫んでるのが聞こえてくる。


やっぱりこういう時、“逃げ”は何より役に立つ。


美乃里、ごめん。だけど……



申し訳なさ半分、解放された安堵感半分。


その、なんとも言えない心情に複雑になりながら不謹慎にも、小さく笑ってしまった。


美乃里がいるから私は、元気をもらえる気がする。


ありきたりだけど、きっと私は、それが嬉しくて仕方ないのかもしれない。



些細なことで自分を保てる事実に幸せを噛み締めていた。


そんな、ある日。


「あ、藍名」



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