【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。
本を落とさないよう注意を払いながら、あまりの嬉しさに香川くんの手を取ってぎゅっと握る。
「ちょ…っ、はっ?何してっ……」
「…あ……ごめんなさい」
一瞬で頰を紅潮させて、意外にも初心な反応を見せた香川くんの戸惑いを孕んだ言葉を受けて、慌てて手を離す。
私が声を上げた事がそんなに意外だったのか、軽く目を見開いて硬直する三村くんがちらりと、視界の端に写ってさりげなく目線をずらした。
ああ、もう……はしゃぎ過ぎた…。
どうにも抑えられない事を反省して、これからはもう少し自重しなければと言い聞かせる。
少し気分を落ち着けたことで、冷静になったのか。
はたと、この前の図書室で自身の核心に触れた煩悶を思い出して、そっと周りを見回してみる。
当然、どこを見ても広がるのは、立ち話をしたりふざけ合う生徒で混雑してる、ありふれた光景。