【改訂版】キスはする。それ以上も。けど、恋人じゃない。



ものの数十秒で別れを告げると、何か言いたげな香川くんに背を向けて、反対方向に足を進めた。


後ろを向く途中で、嫌な影を見た気がしたのは気のせい。


そう思っていたいと懇切に願った。



人波から外れるにつれて、覚束なくなっていく足取り。


1人になってはいけない気がするのに。


これは、元の性分のせい……?


私には、人を無意識に避ける癖でもあるんだろうか。


ううん、考えたって分からないけど。


気付いた頃にはもう、人の子一人いない校舎の端にある階段前で足が止まっていた。



どこかの物語だとこんな時、大抵良い事は起きない。


私にも悪い事しか起きないっていうのはまた、一種の決まり事みたいなもので。


結局変えようのない事実。


正に今それを肯定するように、足音なく感じた気配。


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